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研究 【Study】

研究部報告 千事研第1次中期研究計画のまとめ

1.中期研究計画とは

 千葉県学校事務研究協議会(以下、千事研)は設立以来、全県の研究組織として職務内容、学校事務指導票、財務事務の研究等、様々な研究に取り組んできました。職務内容研究は、昭和53年から職務内容明確化研究委員会が7年間をかけて、1校1名配置の事務職員としてふさわしい職務の基準表を作成し、昭和60年に研究冊子として「職務内容明確化研究のあゆみ」をまとめています。同じ年、研究部の専門委員会として始まった指導票研究は、昭和55年度の全国大会を経て昭和61年6月に学校事務全般を網羅した手引き書として「千葉県学校事務指導票」を発刊しました。財務事務研究については、平成4年の栃木全国大会での提案をはじめ、関東大会・県研究大会等で研究委員会を中心として提案や研究を行ってきています。
 また千事研は、平成5年に規約を改正し、研究部から研修部を独立させ、特別委員会組織の充実を図るなど、文字通り県下学校事務職員の各単位研究会をつなぐ総合的な研究組織として発展を続けてきました。
 こうした中で、多くの会員が望んできたことの一つに、計画的な研究の継続がありました。中期研究計画とは、千事研研究方針及び研究目標を受けてたてられた、数年時にわたる千事研の研究内容の計画です。これは、千事研研究部や研究委員会等での研究のみを意味するものではなく、また千事研の本部提案内容のことだけでもありません。研究大会での各地区による提案研究までをも含む総合的な研究計画であり、全会員の共通理解により、千事研本部と各地区が一体となって取り組む研究計画です。第1次中期研究計画は、平成10年度県研究大会で提案し、平成11年度より15年度までの5年間の研究推進計画です。

職務内容 職務標準研究 (特別委員会(職務標準に関するプロジェクトチーム)による研究
財務事務 (研究委員会による財務研究、各地区提案)
情報 (文書) 管理 (各地区提案)
その他 (各地区提案)
研修制度 研修体系化研究 (研究部による研究)
各地区での研修制度に関する研修 (各地区提案)
学校事務職員制度 学校事務職員の処遇とうに関する研究 (各地区提案)
各地での事務職員制度に関する研究 (各地区提案)
 
 自己研鑽として、自主研修の活用、共同実施によるOJTの効果についても提案しました。
 
 
2.中期研究計画の経緯

(1)職務内容に関する研究

○平成12年度関ブロ提案(千事研試案の作成)

 千事研では、校長、教頭、事務職員への学校事務観、総括すべき職務範囲、それに対する意識や実態に関するアンケートや既に職務標準に関する通知がなされている他県等のものを参考に、「市町村立小中学校事務職員の標準的職務について(千事研試案)」を作成しました。学校事務職員の専門性の発揮と、組織の充実を図り、学校事務の効率化と円滑な事務処理によって、学校事務組織の一層の活性化を期する目的で、学校事務職員が、学校事務を総括し、企画運営委員会を始めとして経営に参画していく役割を明記した試案で、合わせて、会員への周知活動も行いました。


○平成14年度全国大会提案(学校運営組織の改善)

 学校経営に積極的に参画していくためには事務職員自身が事務処理的な業務すべてに精通すること、具体的には学校運営組織の事務部門の管理者として実際には実務は担当しなくとも事務処理の流れを確実に把握し、他者に対して説明できることが標準的職務を定着させることにつながってくると提案しました。
 事務室経営案は、事務職員の学校教育における存在意識を集約したもの、また説明責任を果たすものになると考えます。
 より良い校内情報管理体制を構築するために、私たち事務職員の職の専門性や今まで培った経験を生かし、中核的な役割を担っていくことができればと提言しました。


○平成13年度・平成15年度研究委員会による県大会提案

 研究委員会は平成7年度より「財務事務に関する研究」を『なぜ、学校に事務職員がいるのか』教育課程を支える「学校事務」とは何かを明らかにすべく研究に取り組んできました。
 学校は、学校の教育目標具現化にむけた「組織体」です。学校事務職員は「財務」の視点から子どもたちの教育条件整備のために教職員と連携し、「組織体」を財務の視点で支える機能を果たすための情報管理を提案し、実践していくことが求められます。
 そして、学校運営を円滑に機能させていくためには、意志決定のための情報を分析・提供し、情報を有効活用すること、情報公開条例や個人情報保護条例への対応を含め、学校全体を視野に入れた情報環境の整備を考えなくてはなりません。そして、情報を管理する一つの場として「事務室」があり、そこに組織としての機能が求められていくのではないかと考えます。
 具体的な取り組みとして、予算委員会の効果、そして学校の裁量権拡大に対応できる学校予算のあり方を考えていく上でも、「学校財務事務取扱要綱」の制定が必要との提案を行いました。
 平成14年度からは、それまでの研究を基に、学校経費を「公費」と「私費」の総枠で捉え、総合的な観点に立って学校徴収金を適正に取り扱うための、「学校徴収金会計マニュアル」を研究し、平成15年度県大会に於いて、「子どもたちの教育の支援と財務事務」を提案しました。


○各地区の研究

【職務標準研究】
 市川市  平成15年度千事研研究大会にて分科会提案
 船橋市・浦安市  校務分掌の実態調査及び検討
 浦安市  平成15年度「浦安市職員処務規定検討委員会」(市教委・校長・教頭・事務職員)にて検討
 千葉市 市原市 八千代市 柏市 流山市 我孫子市 沼南町 白井市 香取 君津

【財務事務】
  東 葛  平成11年度千事研研究大会にて分科会提案
  君 津 平成11年度千事研研究大会にて分科会提案
  習志野市 平成13年度千事研研究大会にて分科会提案
  松戸市  平成14年度千事研研究大会にて分科会提案
 八千代市 浦安市 沼南町 安房

【情報(文書)管理】
  船橋市  平成14年度千事研研究大会にて分科会提案
  市原市 習志野市 八千代市 柏市 香取 安房 君津

【給与・旅費】
  東葛 柏市 野田市 我孫子市 沼南町 関宿町

【手引き書・指導票作成】
  市原市 習志野市 船橋市 浦安市 野田市 鎌ヶ谷市 香取 安房

【事務だより】
  習志野市 八千代市 香取


(2)研修制度に関する研究

○平成14年度研究大会本部分科会提案

 学校事務職員が自らの資質と能力を高め、時代の要請に応えうる人材として、その力をつけるためにはどのような研修が望ましいか、研究大会では、「千葉県学校事務職員研修体系図案」「研修領域案」「研修項目一覧表」を作成し、会員に図りました。
 研修の体系としては、キャリアに応じた層別研修を基本とし、その内容は標準的職務の総括する範囲を実務的領域とし、さらに学校事務職員としての役割を果たすための専門的な研修を組み入れていきます。また、県・市町村教育委員会による制度研修を充実させることにより、研修を受ける機会を保障することが望ましいと考えました。
 そして、自らの職務能力を高めるための自己研鑽として、自主研修の活用、共同実施によるOJTの効果についても提案しました。

○各地区の研究

【研修の体系化について】
 千葉市 平成14年度千事研研究大会にて分科会提案
平成15年度より市教委研修担当課が中心となり、事務職員参加の下、事務職員研修カ リキュラム検討委員会発足。市事務職員研究部においても独自案についてなお研究中
  習志野市 香取

【研修マニュアル】
  船橋市 我孫子市

【研修内容】
  松戸市


(3)学校事務職員制度に関する研究

○平成14年度全国大会提案 (定数加配で見る事務長制)

 千葉県では、平成11〜12年度に、市原市立有秋中学校とその学区の小学校3校により「学校事務の効率化に関する実践的調査研究」が進められてきました。
実践方法は、有秋中学校を拠点校として、学区の小学校の事務職員が週1回定期的に集まり、事務領域を分担し処理しました。各事務職員は、辞令上の学校に勤務する事を主体とし、分担業務は自校で行い、拠点校で連絡調整等を行いました。
 共同実施の取り組みやすい形としては、平成13年度千事研総会で集約したアンケートでみると、学校間連携が挙げられます。地域リーダー(例えば、事務長の職名にある事務職員)を中心としたネットワークマネージメント、施設設備・備品を巡る事務職員の相互連絡としてのネットワークづくり、市町村あるいは出張所単位の事務職員組織を活用したネットワークづくり等を行う事で、学校間連携を活性化できるものではないかと考えます。実現化には課題が多々あります。そこで注意すべき点は、単数配置が多い事務職員の状況を活かした学校間連携を考察する事が大切だということです。学校に勤務する教職員の一員としての視点を基本に据えて考察する必要があります。
 さらに、学校間連携における相互調整を行う立場にある事務職員の権限と責任を明らかにすべきだと考えます。また、標準的職務の通知との関係では、基本的なスタンスとして学校事務職員は勤務校の教育方針に沿った円滑な事務処理を行う事で学校経営に参画し、特色ある学校づくりに寄与することが大切です。

○各地区の研究

【学校間の連携強化・共同実施】
千葉市 鎌ヶ谷市 沼南町 白井市 香取

【学校運営参画について】
山 武 平成15年度千事研研究大会にて分科会提案
夷 隅 平成15年度千事研研究大会にて分科会提案
香 取 各市町村ごとに、財務事務の適性かつ円滑な執行を目的とした「財務事務取扱要綱」の 作成について検討し、東庄町では平成15年4月25日に、公布された。
東葛 安房

山 武  平成15年度千事研研究大会にて分科会提案
夷 隅  平成15年度千事研研究大会にて分科会提案
香 取  各市町村ごとに、財務事務の適性かつ円滑な執行を目的とした「財務事務取扱要綱」の 作成について検討し、東庄町では平成15年4月25日に、公布された。
東葛 安房



3.中期研究計画の成果

○職務標準に関する研究

 平成12年7月1日、職務標準表の実現の他に、コンピュータへの対応、共同実施、諸規定の見直し等を目的として第1回学校事務推進検討委員会が開かれました。
 平成13年1月25日の第5回学校事務推進検討委員会には、義務教育課から副課長と管理主事が出席され、推進委員会の力強い歩みを感じました。
 そして、当面の最大課題であった職務標準の研究について、平成13年春に、「学校事務職員の標準的職務に関する研究のまとめ」を、千葉県教育委員会へ報告しました。
 この「学校事務職員の標準的職務に関する研究のまとめ」は、13年5月に千事研全会員へ配布され、その後、千葉県小学校長会・中学校長会からの指導により、全県下の校長・教頭へダイジェスト版が配布されました。
 平成15年3月25日、県教委から各市町村教委への「市町村立学校における事務職員の職務内容の位置付けについて」の通知が出されました。この通知には−職務内容の整理、検討に当たっては、千葉県学校事務研究協議会等で研究された内容も参照されたい−と記載され、千事研の研究が活かされています。

○共同実施の推進

 複数校の事務職員が共同で事務処理にあたる「共同実施」の効果は、OJTによる事務職員自身の質の向上のみに留まらず、事務職員の組織化により、学校相互支援の機能が高まり、学校運営組織の事務部門の強化につながる事が明らかになってきました。千事研では、平成14年度より研究委員会が共同実施についての研究に取り組み、平成15年度総会に於いて、現状と研究の方向性を提案しました。また、平成15年度より加配校連絡協議会を設置し、実践地域の情報を共有しながら、共同実施により個々の事務職員の経営参画がどう進むのかを研究しています。 

○各地区における研究

 各校1名の配置が多い特殊性から、義務制諸学校の学校事務職員の研修は、実務研修がその中心になっていました。しかし、千事研で5年という期間を持って計画的な研究を始めた事は、学校事務職員が、目先の事務処理だけではなく、自分達のあるべき姿を求めてより深い研究を行う推進力となりました。
 各地区での研究も、単位事務の処理方法に関する研究から、さらに、広い範囲を総括していくためのマニュアル作成や、事務処理のIT化への研究へと広がっています。それは、事務処理を効率化し、学校経営に積極的に参画していくための取り組みであるとも言えます。そして、自らの資質の向上のための、研修のあり方を研究する地域も現れました。
 「市町村立学校における事務職員の職務内容の位置付けについて」の通知により、学校事務職員の学校経営へのかかわりは、一層明確になっていくと思われます。各地区での研究の成果を活かし、さらにキャリアに応じた力量を発揮して、学校事務の未来を切り開いて行きましょう。



4.今後の課題

 「市町村立学校における事務職員の職務内容の位置付けについて」は、各市町村教委から学校へ、様々な形で通知されています。多職種による検討委員会を設置し、その中での論議を経て職務標準表が作成された地区もあります。
今後は、職務標準表にある総括する範囲について、きめ細かく研修計画を立て、研修の成果を実践に活かしていく必要があります。通知の実現のためには、研修の充実が必要です。
 また、県からの通知にある処務規程の整備も、今後の課題として残されています。
 学校事務を総括していくことは、学校という組織の中で事務部を運営していくことです。まず、事務部を組織として意識し、そしてより質の高い、誰からの評価にも耐えうる学校事務の構築が必要な時代になっています。また一方、教職員が子どもと触れ合う時間をより一層確保することも必要であり、事務部の質を保ちつつ、教職員の事務処理に係る負担を増加させないためには、さらなる事務の効率化が求められます。その方策の一つとして、地域の学校の事務職員が連携し、事務処理方法を統一していく、さらには、定型的な事務の集中処理による負担の軽減等が考えられます。
 学校間の連携・共同実施の実践は、それまで個別に仕事をすることに慣れた事務職員の意識を変えていくところから始めなければなりません。学校間の連携・共同実施による集中処理は、事務の効率化、及び相互支援による質の向上につながり、学校事務職員の学校経営参画への手助けとなるでしょう。そして、経営参画、教育支援につながる共同実施のあり方を研究していくことが、今後の課題です。






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